感性検索とその未来としてのレコメンデーション

先週の金曜(2008/3/7)、私が勤める会社 (ALBERT) がWBSで特集された。
(YouTubeで見つけたので、こっそり貼っておく)
テーマは「感性検索」。あまり聴きなれない言葉だと思うが、感性で検索するとい言葉で大体の意味は察していただけるのではと思う。この感性検索と私が考えているその先の未来について、少し詳しく書いてみたい。

感性検索以前

感性検索について語りたいのは山々だが、まずはキーワード検索について改めて話しておく必要がある。
検索といえば多くの人はキーワード検索をまず思い浮かべると思う。検索エンジンは「検索」というキーワードを指定すれば、そのワードを含む(参照された)ページをリストで表示する。インターネットに多少なれた人なら、日常的に利用していると思う。
このキーワード検索には大きな問題がある。それは、キーワード検索を最初に利用するときに直面するであろう問題であり、検索を日常的に利用する人であっても頭を悩ませる問題であるだろう。つまり、「適切なキーワードを考える必要がある。」ということだ。

私はプログラマなので、検索するときにはまずわからない名前(プログラミングの専門用語)があって、それを検索することが多い。この場合Googleはかなりの確率で適切な結果を返してくれる。だが、そうでない場合、わからないこと、気になったこと、思い出せないことが、具体的な名前になっていない場合、どんなキーワードを使用すれば望む情報が得られるか推測し、試行錯誤してみる必要が出てくる。望んだ結果が得られるかどうかは、慣れとセンスが要求される。
この問題がより顕著に出てくるサービスの1つにECサイトがある。例えば、デジカメを探して、とあるECサイトに行って、キーワード検索でほしい商品が見つかるだろうか? 多くの場合、答えはNOだろう。(もちろん、既に商品が決まっているなら話は別だが)
多くのサイトでは、キーワード検索ではなく、カテゴリーを探し、その中でお気に入りのメーカーや価格、その他の条件で候補を絞っていくという、いわゆるスペック検索が使用される。スペック検索は一見便利に見える。ただし、これが出来るのは商品についてそれなりの知識があればこそで、商品知識に乏しかったら、口コミ情報、身の回りの詳しい人に聞く、実際に店舗に行って店員に相談する、などの選択肢しかないだろう。
やや話は逸れたが、デジカメなどのスペックという基準があり、一般的な答えを出すことが可能な(100人いたら、100人にオススメできる商品が存在しうる)ケースはまだ幸運だろう。商品の中には、個人の嗜好性が強く、キーワード検索はもとより、スペック的な検索も出来ない商品がある。例えばアパレルなどが当てはまる。
実際、アパレル系のECサイトではキーワード検索は全く役に立たない。どんなキーワードで検索すれば好みに合う洋服が見つかるかなんて、検討も付くはずがない。仕方ないので、カテゴリやサブカテゴリから商品の一覧に移動し、サムネイル画像などから良さそうな商品を判断して詳細を確認する。自分の好みに合うかどうかが重要なので、下手に(スタイリストなどの権威のある人なら別だが)他人の意見を聞くことも難しい。結局はブランド頼みの商品選びになりがちだ。
こういった、キーワード(スペック)検索が有効でないケースは、実のところ本当に多い。例えば、食事、旅行、家。むしろ、キーワードで検索できることが例外といっても過言ではない。

感性で検索するとは


株式会社ALBERT 代表者 Blog: 感性検索とは何か
より引用

【感性検索】(2008年3月6日付、日経産業新聞2面より引用)

感覚的な表現の言葉や、写真などを選ぶことで、目的の情報を検索する技術。検索語の入力は必要ない。デジタルカメラなら「画質を気にする」「電池の持ちを気にしない」といった質問に答えながら商品を絞り込める。特定の色や形状を選択すると、類似の商品を探し出す手法もある。
一般的な検索では、的確な検索語を入力しないと目的の情報にたどりつきにくい場合がある。感性検索は商品知識などが乏しい人でも使いやすい。アルベルトやチームラボ(東京・文京区)などが開発を進め、ニッセン、ガリバーインターナショナルなどが導入している。

感性検索の特徴をまとめると、以下の通りだと思う。

  1. 具体的なキーワードがわからない時にも、感性にフィットする画像やフレーズなどを選んでいくだけで検索できる。
  2. キーボード操作が苦手な中高年層でも、マウスやタッチパネルなどで入力することができる。
  3. 何を探したいか自分でも分からない潜在ニーズを掘り起こすことができる。
  4. 文字入力がしにくい、携帯端末やゲーム機器などでのメリットが大きい。
  5. 文字を使わないので言語を選ばず、グローバル展開がしやすい。

感性検索の特徴として上記に追加するなら、「外れ値を許容する」という点だ。外れ値とは、本来なら(検索)結果として出すべきではない結果のことで(当然外れが多数ではNGだが)、感性検索では妥当な結果の中に多少外れたものがあっても受け入れてもらうことが可能だ。理由は単純で、ユーザーは曖昧さを含む条件で検索している。条件自体が曖昧さを含むので、結果に曖昧さが含まれるのも当然といえるからだ。もちろん、実際にユーザーに納得してもらうためにはいくつかの工夫が必要になる。例えば、当てはまりの良いものを優先的に表示するなど(と、これはキーワード検索でも普通に行われているが)。

感性検索の事例

今のところ、私が関わった感性検索の事例としては、大手通販のニッセンに導入したイメージセレクトサーチシステムがある。写真を選んで、その写真に埋め込まれたメタ情報(ローヒール、ラウンドトゥなどの特徴を表す情報)をマウスクリックで指定して、その情報に合う商品を表示する。
キーワード検索では思いつかない特徴、カテゴリー分類では網羅できない特徴を、イメージセレクトサーチでは簡単に指定して、条件にあう商品を見つけることができる。
(正直なところ、(インターフェース、精度などの)反省点があり、目下、改良版の作成中です)
イメージセレクトサーチでは、商品知識がなくても、メタ情報が表示されるので、ポイントとなる箇所を把握することができる。これは、コレクター・マニア向けの商品でより重要な意味を持ってくる。素人目には同じものにしか見えない商品の、こだわりのポイントを可視化できるのだ。

より先の未来、脱検索、レコメンデーション

最後に、やや絵空事じみた話をしておきたい。
感性検索は最初に書いたように、前提知識などがなくても比較的伝わりやすい。だが、本当に目指すものは検索とは異なる概念で、その目標とは「ほしいと思うことと、その目的の入手が同時に発生する」ことだ。
現実では、春物の上着を探しに出掛けたはずが、結局買ったのは靴と鞄だったといったことは良くあることだと思う。こういった発見をセレンディピティなどと言うそうだ。
自分から能動的に探していたわけではないものが、幸福と共に訪れるという現象を意図的に発生させる仕組み、これこそがレコメンデーションであると考えている。先に、キーワードで検索できることが例外だと書いたが、レコメンデーションの対象はそれらを含め、より多くのものに適用することができ、その可能性はキーワード検索以上に広がっている。
あらゆるもの(もちろんWEBに限らず!)をレコメンデーションすることが出来るようになれば、Googleを超えることも夢ではないと夢想している次第(まあ、Googleがキーワード検索の枠に留まっているはずがないですが、それはまた別の話ということで)。

というわけで、分析力をコアとする情報最適化企業・株式会社ALBERT(アルベルト)を宜しくお願い致します。という広告で今回は締めさせていただきます。もしかしたら続く。

ところで、もしALBERTに興味をもって頂けた方は是非採用情報などを参照いただいて、応募いただけると非常に嬉しかったりします。